不安をあおるひとたち

2016年12月05日

質問;肺炎予防にワクチン注射を!

答え;入院して肺炎で亡くなる方の大部分は誤嚥性肺炎です。残念ながら誤嚥性肺炎のワクチンはありません。ワクチンが効くのは肺炎球菌が原因の肺炎だけです。ちなみにデータ上ワクチンを打つと肺炎球菌の肺炎は減るみたいですが「死亡率は変わらない」つまり打っても打たなくても生死には関係ないと書いてありました。ワクチン打っても死因は3位のままです。

 

質問;「隠れ骨折」という言葉!

答え;「年を取ると、いつの間にか背が縮む」これは常識ですが、実はこれがこの「隠れ骨折」です。骨折というと恐怖を感じますが、多かれ少なかれ高齢になるとなります。

質問;インフルエンザは予防と検査と投薬を!

答え;インフルエンザワクチンや診察検査キットや治療薬が開発されたので、さあ病院に行こうと騒がれていますが、実はインフルエンザはちょっと症状がきついけれど風邪の一つです。毎年必ずはやりますし年齢を重ねると免疫が自然につき強くなります。

質問;認知症は早期診断、早期治療を!

答え;認知症の薬が効くのはごくごく一部の特殊な認知症患者で、大半は薬よりも周りの態度や声掛け、生活環境の方が進行予防にとって重要です。ある認知症の患者さんの名言「俺は何も困っていない」って、ある意味本人は幸せかもしれませんね。

 

「インフルエンザはほっておいても自然に治ることを知っていますか」と言うと「え、本当ですか」とビックリされる方が意外にも多いです。薬を飲まないと「死んでしまう」と本気で信じています。私が医者になりたての頃は「風邪で休むなんてお前さぼっとるのか」って怒られていたし、昔からインフルエンザは毎年蔓延していました。安心してください。インフルエンザは風邪の一種です。インフルエンザは怖いという宣伝に負けないで。

 

 

良い医療とはなにか

2016年11月11日

質問;いつも健康でいたいので「眠れない、血圧が心配」などなにかあれば、すぐ病院で薬をもらいたいです。

答え;一見よさそうに見えますが、10個の症状で10個の薬が処方されてしまいます。薬をたくさん飲むことが良い事かどうか総合的に判断してください。

 

質問;健康でいたいので、僅かな異常を見つけるためにすぐに検査をしてほしいです。

答え;機械による検査結果や数値データにこだわる方は多いですが、それよりも自分の身体の調子を自分で感じとれることこそ大切にして欲しいです。

 

質問;現在、いくつかの専門科に通院し、それぞれ薬もたくさんもらっています。最近なんとなく体調不良なのですがどこに受診すればよいですか?

答え;高齢になるとあれもこれも気になりどんどん先生や薬がふえてしまい結局何かあった時に困ってしまいます。全てを相談できる主治医を1人決めて薬や専門病院通院なども含めて検討してもらいましょう。

 

質問;専門医に聞くと、データに異常があるから心配だと言われていますが、特に自覚症状もなくご飯も美味しいです。

答え;その心構えが大切だと思います。多少の異常や不具合があっても自分が健康だと感じられる気持ちが大切です。あくまで治すことに固執すると、治らない不安で心がいっぱいになります

 

「なにかあったら心配」「病気になりたくない」という気持ちがあまりにも強いと、安心して平穏に暮らせなくなります。あまりにも自分や周りの家族が皆心配ばかりしていると本当に病気になってしまいそうです。「なにかあってもその時はその時」と腰を据えて今を楽しむことが出来る方をみると本当に尊敬します。心配は私がこっそりして見守りますから、どうか安心して今を楽しく生活してください。

 

強毒性インフルエンザの対応

2016年10月05日

質問;もし強毒性のインフルエンザが流行した時はどうなりますか?

答え;通常のインフルエンザの対応と変わります。

その1:かかりつけ医、病院には行ってはいけない!

その2;発熱者は「特設の発熱外来」に行く!

その3;外出は基本的には禁止となる

 

質問;発熱外来ではどこまでしてくれますか?

答え;防護服に身をまとった医師が鼻に綿棒を入れ、陽性が出た場合は抗インフルエンザ薬(お勧めはしませんが)を処方されることになるでしょう。

 

質問;陰性だったらまた並び直しをしたほうがよいですか?

答え;おそらく待合は隔離されていないので陰性の人は陽性のひとから感染する恐れがでますのでお勧めはできません。

 

質問;陽性の場合どうなりますか?

答え;重症者は入院します。それ以外は自宅で過ごし外出に制限がかかります。一人暮らしの人は自力で、家族がいる方は家族に看病してもらいます。その場合家族内での感染も懸念されます。ウイルスとの闘いは基本的に自分の免疫との闘いで、今の所、特効薬では重症化を防げません。栄養状態、衛生状態がよい環境で自然治癒を待つしかないと思います。

 

※強毒インフルエンザとは現在のインフルエンザよりはるかに強毒で、日本にはまだ強毒インフルエンザは上陸していません。

まず起きないとは思いますが。強毒性のインフルエンザが流行した場合、普段流行るインフルエンザとの対応とは全く異なる対応を取るよう医療機関は指示されています。「かかりつけの医院や病院には来るな。専門の発熱外来に検査に行け(ただし感染のリスク大)。他人にウイルスを蔓延させないために外出はするな。」となります。インフルエンザと思ったらすぐ来なさい!と言っておきながら強毒性の時こそ不安なのにその時は来るな!だとなんか矛盾を感じますね。

 

医療の方向性

2016年09月01日

質問;医療の方向性とは何ですか???

答え;一つの方向性は 救命、延命を目指す医療です。限りなく「生を追求」します。例えば癌が見つかったら、癌と闘い勝つことを目標にさまざまな治療をします。検査、入院、手術など苦痛を伴う治療も含めて積極的に病気と闘います。いわゆる闘病生活が始まります。皆さまが一般的に思っている医療とはこのことです。

 

質問;ではもう一方の医療の方向性とはなんですか??

答え;死を到達点と受け止め、残された時間の「生活の質」を重点に置く医療、生活・・積極的な医療ではなく痛みを取るなどのいわゆる緩和ケアと呼ばれる医療です。緩和ケアは生活の質を優先します。残っている時間(最期の時間)を自分のやりたいことに使い過ごしていただきます。闘病生活の割合は薄まります。

 

質問;具体的にはどうするのですか?

答え;好きな物を好きなだけ食べる、ゆっくりと自分のしたいことをする。自分の人生の軌跡を回顧する。周りに感謝する。医療的には痛みや不快感を取り除く、検査や薬や通院も最小限にするなどです。

質問;今、どちらか決めなければいけないのですか?

答え;いや、常に両方の考え方を念頭に置き、時が来たら、「えいやっ」と、どちらかに決めてください・・・。

 

鈍平さんの物語です。彼は現在95歳。去年まで約40年以上毎年、某有名病院で健康診断を受けていました。様々な専門家の外来にも通院していました。彼は専門家の先生にいつも確認していました。「僕は何の病気で死にますか?」と。毎年答えは各専門家先生の専門とする「病気だったらうちに来なさい」と。しかし今年とうとう健康診断を止めました。現在、食事量は減り、寝ている時間が増えてきました。私と会うといつも握手しながら話します。「僕は老衰かな」「そのようです」 実話

 

 

熱中症

2016年08月01日

質問;テレビでは熱中症にならないように水分を摂れと放映していますが、実際なかなか水分を取ってくれません・・。(家族の談)

答え;確かに水分補給は大切ですが、暑さ対策、風通しをよくする、室温を管理する、等のほうが大切です。

高齢者は基本的に、体の必要水分量は若い人より少ない、また汗をかき過ぎることは少ないので、ご家族が期待されるように水分を取らないのが一般的です。

 

質問;うちのおじいさんは(おばあさんでもよい)冷房を嫌います。

答え;冷房の冷気はかなり高齢者の深部に到達し不快を与えるようです。可能であれば直接冷気を当てないように、風は自然な風が理想です。

真夏なのにコタツに入っている方もいます。ちょっとビックリ。

 

質問;いわゆる熱中症の対策は?

答え;体温が38度以上になって、少し元気がないなと感じたら、保冷剤などをタオルに巻いてで首の後ろ、わきの下、太ももの付け根などを冷やす、水分補給(口から無理な場合は点滴)、そして換気(風通しを良くする)です。

 

質問;命に関わる状態の目安はなんですか?

答え;体温が高度に上がる(39度以上)、意識が薄れる(呼びかけても応じない)などです。意識がしっかりしていて、体温が37度台程度であれば大丈夫です。

 

我々はいつから自分の本能を信じなくなったのだろう? 今日は気温が上がるのでこまめに水分補給を、今日は寒いから一枚上着を着ろ、〇〇を食べろ、〇〇をするな、とか皆テレビやラジオの言う事を聞いて生活している感があります。もっともっと意志、暑い、寒い、不快など、自分の感覚や本能をもう少し大事にして生活したいものです。

健康について考察

2016年07月01日

質問;ためして○○、○○の健康、たけしの○○ などの健康番組を見た後、「自分の症状は●●病かもしれない」「もし○○病になったら大変だ」と不安になります

答え;365日毎日見たら365個の不安が発生し気が狂いそうになりますね。心配事はかかりつけ医に相談してください。信頼すべきは身近な医者のはずです。

質問;健康診断を毎年受けても不安です。半年に一度と増やしたほうが良いでしょうか?

答え;検診の回数を増やせば寿命が延びるというデータは残念ながらありません。健康診断は未来の予測にはならないです。今現時点が大丈夫という確認に過ぎないのです。

 

質問;健康食品やサプリは何を飲めば良いでしょうか?

答え;健康食品やサプリは医薬品としては「認められない効果の少ないまたは効果の不確かなもの」という定義です。宣伝文句を鵜呑みにしてそれさえ飲めば大丈夫というものは残念ながらないと思います。

質問;私の身体は健康(大丈夫)でしょうか?

答え;朝起きて、お腹が空いている。食事が美味しい。笑顔や幸福感などの日常生活が宜しければ健康です。100才までぴんぴんしていたいと思うあまり、病気におびえ、精神的にストレスを感じると逆効果です。健康は有難がるもので、追い求めるものではなさそうです

 

癌の末期の患者さんと接して感じることは、なににもまして「食べ物がおいしい」ということは素晴らしいということです。様々な慢性の病気をもっていても、この「美味しい」と感じられれば、まず健康だと言っていいと思います。

 

 

老衰(おいて衰える)ということ

2016年06月25日

その1:老衰してくると、食べても痩せてくる。そして食べる量が減ってくる。

 

質問;頑張って食べる努力をした方がよいですか?

答え;「頑張ってもらいたい」というご家族の気持ちは解りますが、無理やりは禁物です。身体が欲しなくなる状態とご理解ください。

 

その2:老衰してくると、昼夜の区別がつかなくなる。ぼんやりと過ごすようになる

質問;なにか刺激になることをさせた方がよいですか?

答え;現実から離れ旅立ちの準備期間であるとご理解ください。そのままの状態を認める勇気が必要かと・・・。

その3:老衰してくると、なかには辻褄の合わないこと言ったりする

質問どう対処すれば・・・・

答え;お別れの挨拶、感謝の気持ちなど、伝えたいことを伝えましょう。

 

老衰してくるといわゆる認知症と言われる状態に似てくることがあります。今しがたの記憶が消え、昔のことは非常によく覚えている。この世(日常生活)から離れ、旅立ちの段階に来ていると。過去を振り返って人生を総括している時期であると。逆に言うと認知症は老衰の過程であると言えますまいか。

 

家族の気持ちと一般的な施設の対応

2016年05月25日

家族;転んで骨折するのが心配です。

施設;転ばないように立とうとすると座らせるように指示します。ベッドにもセンサーをつけて動いたらすぐに飛んでいき動かないように指示します。騒ぐようなら更なる拘束をします。

本人;見張られず、いちいち支持されず、自由に好きな時に好きなように歩いたりしたいのに…

 

家族;きちんと栄養管理をしてください。病気があるし痩せるのも心配です。

施設;はい、病院で出てくるような味の薄い塩分調整した食事をきちんと完食するまで無理やり詰め込みます。

本人;もう年なのだから美味しいものを好きなだけ好きな時間に食べたい・・。

家族;徘徊が心配なので施設の玄関にオートロックをつけてくささい。

施設;外に出ないように拘束します。部屋から出ないようにも監視します。

本人:以前のように外出したい。一人で自由にしていたい。

 

我が家中国分ではできるだけ本人の気持ちを優先し、家族と話し合い、本人にストレスの少ない介護を目指していきたいと思います。

 

認知機能の落ちた高齢者への施設でのコール対応はどうするのか。「さみしいから」「ボタンを押すと人が来るから面白い(かどうかは不明であるが)」または理不尽と思える要求でボタンを押すこともある。全部受け身で対応することが良いとは限らない。本当は、コールに頼らないで済むような真のおもてなしの心(察する気持ち)が求められているのではと思います。難しい問題です。

 

認知症肯定論

2016年04月20日

その1;こだわりが消える。好きだった趣味に興味がなくなる。

その心は;「この世に未練はない」と言うための準備期間です。プラスに見ていきましょう。「今日は何日、何曜日か」などと覚える意味はうすいと思います。

 

その2一人でいても飽きない

その心は; 周囲に無関心になるので自分の世界に入って、1日中忙しく誰かと会話したり仕事してるつもりになったり空想していることが多くなります。しかし逆に関心を引きたくていろんな周囲を困らせるようなことをすることがあります。そこにはその方の不安と「理解してくれない」という孤独感があります。安心させてあげましょう。

その3過度な苦痛が軽減される

その心は;認知症になると、体に対しての過度の関心が薄くなり、痛み、不安などが軽減される傾向があります。そして「死」に対して自然な形での受容ができるようになるということです。

 

その4笑顔が素敵になる

その心は;一昔前は「恍惚の人」などと言われたように、なにか憑き物が取れたような、わだかまりが消えたような、現世の苦しみから解き放たれたような、そんな感じを受けます。たまにのぞかせる満点の笑顔に遭遇することでしょう。

 

頭の回転(認知力)と体の動きは比例関係にあるのが良い、と言うのが私の持論です。身体が元気で頭の回転が鈍ると徘徊や事故につながる。身体が衰えているのに頭の回転が良いと、うつや絶望へと導かれやすい。身体が鈍ってくるのと同様に頭も鈍っていくのが自然の摂理と言うものではないかと思うのです。

 

患者学(よりよい関係を目指して)

2016年03月20日

質問;風邪をひいたので風邪薬を下さい。

答え;よく耳にする発言です。しかし実は大きな問題があります。

 

質問;どうもよくわかりませんが・・・・?

答え;実は風邪ではなく、扁桃腺が腫れる扁桃腺炎であったり、だるいから風邪であると思っていたら重篤な病気が潜んでいたりするかもしれません。自己診断は危険です。

 

質問;ではどうすればよいのですか?

答え;まずはご自身の抱えている症状を詳しく伝えてください。例えば、熱がある、咳が出る、喉が痛い、だるい、鼻水がでる、下痢をしている、気持ち悪い、などなどです。

これらの症状から医師が適切に総合的に診断します。

発言;頭が痛いのでCT(MRI)検査をしてください。

答え;やはりよく耳にしますが問題です。患者さん自身が脳の疾患を疑って(診断して)検査が必要だと判断しています。頭痛の大半は頭の表面の痛みです。よく聞くと解りますので安心してください。無駄な検査をしなくて済むかもしれません。またCT検査には放射線の被爆から癌になる可能性があり極力避けたいと思います。

テレビやインターネットで調べるといろんな怖い病気がでてきます。すると不安、恐怖が増します・・。


昨今、インフルエンザの検査をしてほしいと医院を訪れる人が増えました。その元になっているのはインフルエンザに対する恐怖、不安な気持ちからだと思います。インフルにかかると薬を飲まないと治らないと思っている人もいるぐらいです。インフルエンザは風邪のひとつで基本的には自然に治癒するものであるという基本事項をしっかり頭に入れておればもう少しおおらかに過ごせると思いますがいかが。