「我が家にたどり着けたことが幸運だった」
2025年07月16日
今年の3月にご入居されたご利用者様が、5月にご逝去されました。
わずか2か月という短い期間ではありましたが、今も胸に残っている日々があります。
入居前、病院におられた頃は、ほとんど食事をとることができず、食べられてもムース状のものを少量。上田医院附属のデイサービスをご利用いただくようになってから、少しずつ食べられるようになっていきました。日によっては好きなものを美味しそうに召し上がる姿も見られ、ご家族様と一緒にお食事を楽しむ時間がとても穏やかでした。何なのかわからないムース状のものではなく、形ある、みなさんと同じ食事をとることができ、目には力が宿っていきました。
我が家に入居してからも、レクリエーションや体操にはいつも参加されており、中でも、ビンゴ大会で「自分もガラガラを回したい」とはっきり意思を示された時のことは、今でも鮮明に覚えています。
静かな方という印象の中に、確かな「参加する力」や「楽しもうとする気持ち」「楽しんで、生きるんだ」という強い想いを感じた瞬間でした。
ある日、テレビを観て涙を流されているご様子に気づいたスタッフが声をかけると、「いい曲だから…」と。流れていたのはKANさんの「愛は勝つ」。
そのまま皆で一緒に口ずさみ、小さな合唱の輪が広がったことも忘れられない思い出です。
奥様と娘様もとても献身的に寄り添われていて、時にはお好きなものを持ち寄ってご一緒に食事されたり、ゆっくりとお話されたりしていました。
居酒屋イベントには奥様も参加してくださり、ご主人が好きだったウニを持って来てくださったことも。笑顔とおしゃべりが飛び交う、まるで本当の「我が家」のような、あたたかいひとときでした。
旅立ちが近づくと、ご家族が交代でそばに付き添われ、最期の時まで一緒に過ごされていました。悲しみの中にも、静かなぬくもりのあるご葬儀で、奥様の涙がとても印象に残っています。亡くなる直前、ご家族様の「もう大丈夫だよ、安心していいよ」という声かけに安心するように穏やかに、「任せたよ」というように息をひきとりました。
翌日、再び行われた居酒屋イベントには、ご主人のお写真を持った奥様が参加してくださり、スタッフと一緒に思い出話をたくさん語り合いました。「我が家にたどり着けたことが幸運だった」とおっしゃってくださった奥様の言葉が、今も心に残っています。
我が家中国分では様々な“奇跡”や“物語”がたくさんあります。
ひと家族、ひと家族との出逢いも奇跡のひとつで、毎度毎度素晴らしい“奇跡”をみせていただけます。
そのたびに“大切にしなければいけないこと”を再確認させられます。
そのひとつひとつの物語とともに、これからも日々を過ごしていきたいと思っています。
千葉県市川市にあります、上田医院附属 我が家中国分 は入居者様、ご家族様とたくさんの奇跡をおこしていきたいと思っております。



