訪問看護ステーションすみれ  “思い”へ寄り添う

2025年12月11日

秋から冬に季節が移り始めた頃、1人の男性が住み慣れたご自宅で旅立たれました。

(ブログ内はAさんとさせていただきます)

 

Aさんは高校教師。癌を患い入院しながら治療を受けていましたが、残り少ない時間をご自宅で過ごしたいという思いのもと退院されました。

Aさんを退院に突き動かしたのは、生徒のため学校に戻りたい、また教壇に立ちたいという強い思いでした。

 

退院した日、その思いを叶えるため医師や担当看護師と話し合いました。

担当看護師は退院にご尽力いただいたご友人の先生方にご協力をいただけるかご相談の連絡をしました。

ご友人の方々は「本人の思いを叶えてあげたいです」「私たちで連れて行きます」と心よくおっしゃってくださいました。

 

その3日後。退院してわずか5日後にAさんは担任として教室の教壇に立たれました。

 

「僕からの最後の授業だよ」

専門科目の授業をされ、生徒さんの中には涙する子もいたそうです。

授業後の写真には生徒さんに囲まれて笑顔のAさんが写っていました。

教室を出る際には廊下にほぼ全校生徒の皆さんが見送りに出ていました。一人一人の顔を目に焼き付けるようにゆっくりと廊下を進み、生徒の皆さんに見送られながら学校を後にしたそうです。

 

帰宅に合わせて担当看護師も訪問しました。疲労感はありながらも写真をみせてくださり、生徒さんとのエピソードもきかせてくださったそうです。

その後も教え子の方がご自宅にお見舞いに来られ、写真を撮ったり談笑されていたと奥様から伺いました。

 

最後の授業をした4日後、奥様が側で寄り添い見守る中Aさんは旅立たれました。

「眠るような穏やかな顔で逝きました」と奥様が話してくださいました、と立ち合った看護師から聞きました。

 

今回、残された短い時間を精一杯Aさんらしくご自身の意思を貫き通され「よい時間だった」と言ってくださったAさんをスタッフ一丸となりサポートできたことは訪問看護をやっていて幸せを感じる瞬間でした。

 

Aさんのご冥福を心よりお祈り申し上げます。

そして、悲しみが深い中にもかかわらずブログ掲載のお話を快諾いただいた奥様やご友人の先生方々に心より感謝いたします。

 

お読みいただきありがとうございました。