老衰と食欲の関係

2013年03月23日

質問;老衰(ろうすい)(年をとると)食欲がなくなりますか?

答え;老衰とは歳をとり自然に衰えていく状態です。老衰すると若い時と異なり食べる量は減っていきます。「食欲がない」のはつまり、体が食事を欲さなくなるのです。

質問;食欲がないのは病気だと思っていました。病気でなくても食欲がなくなるのですか?

答え;もし胃の病気なら、食べると痛いとか、食べたいけど食べると吐く、という訴えになります。しかし、老衰してくると食欲がなくなるのは自然な事です。

 

質問;無理に食べさせると少しは元気になりますか?

答え;ある程度体力を維持できるかもしれません。しかし吐いて誤嚥して肺炎になる可能性が高まります。

 

質問;老衰となったら家族はどうすればよいですか?

答え;病気ではなく老衰のための食不振の場合に「がんばれ、食え」は本人にとって苦痛だと思います。残り少ない時を一緒に過ごし、思い出話などが出来れば素敵ですね。

去年の夏、あの暑い日々が続く中で、冷房なし、こたつで過ごした老女がいました。また冷房はすこしついているもののやはりこたつとはんてんで過ごしたおじいさんがいました。周りはいろいろ心配していましたがどこ吹く風で、みな今年も元気です。食事量はそのときそのときで変わりました。食べない日々が続く日もありましたが乗り切りました。少し食事量が減ると「点滴」「脱水」と騒がしいこの頃ですがあの方たちの生き様は立派に映りました。

風邪とインフルエンザ

2013年02月16日

質問;インフルエンザとはなんですか?

答え風邪のひとつで原因がインフルエンザウイルスだということです。

 

質問;怖いイメージがありますが?

答え;マスコミが作り上げたものです。10年以上前まではインフルエンザ診断のキットもなく、タミフルなどの薬もなかった時代にも毎年インフルエンザは流行っていましたが、特にインフルエンザの検査をすることも薬を飲むこともなく治っていました。

 

質問;脳症になったり、突然死したりするのが怖いです。

答え;脳症の原因は強い解熱剤を使った場合、もしくはタミフルなどの薬を使ったほうが確率は上がりますので当院では出来れば使いたくないです。

 

質問;タミフルなどを使うと早く治るのでは?

答え;そう宣伝されていますが実際は、熱が早めに下がる傾向になるみたいですが治ったわけではなくウイルスは体に残っていることが解りました。ですから学校などでは解熱後2日で登校可能だったのが発熱後5日経たないと登校できなくなりました。

 

質問;インフルエンザでもほっておけば治りますか?

答え;身体には自然治癒力があります。自力で治った場合は体に免疫が着くのでその後しばらくはかからなくなります。タミフルなどを使用した場合は体に免疫が着きにくいのでまたかかりやすくなります。

 

「ただの風邪ならいいがインフルエンザなら困る」逆に「インフルエンザなら嬉しい」などの奇妙な発言を聞くことが多くなりました。会社に行きたいのにインフルエンザだと出社できないとか。受験生などは再受験ができるからとインフルエンザの診断を求めてあちこち医療機関を回っています。あいた口がふさがらず診察していますがいまだインフルエンザにかかっていません。インフルエンザも風邪のひとつだと思うほうが社会は混乱しないと思います。

 

緩和ケア BSC(best supportive care, 最善の支持療法)

2013年01月12日

質問;BSC=「緩和ケア」とは治療の見込みがない人の医療ですよね?

答え;緩和ケアとは一般的に「痛みなどを緩和する(やわらげる)等、日常生活を快適に過ごすための治療」を言います。

 

質問;食べなくなったので心配です。なんとか食べさせる方法は?

答え;「食べない」のは「食べたくても食べることが出来ない」のではなく「体が少ない食事量しか欲しない、または食べる事を欲しない体になった」と理解すべきです。ご家族的には食べてほしいと願う気持ちは理解できます。「食え、食え」の声掛けは本人を苦しめます。最後の場をともに過ごす、手をにぎったり、マッサージしたり、昔話に花咲かせることの方が何倍もよい過ごし方です。

 

質問;点滴していただけますか?

答え;この時期の点滴には罪の方が大きいです。点滴の栄養は身体が受け付けないばかりか癌に取られます。水分は浮腫みとなって身体全身にたまっていき、体を苦しめます。

質問;脱水になるのでは?

答え;世間的には負のイメージですが、人間は自然な状態で過ごせば最後は必ず脱水(枯れていく)になります。脱水になると眠くなり、苦痛も軽減させます。より自然に逝くことができます。

―ホスピスケア学会から抜粋―

 


普段、美味しく食べ、寝て…、不快な所がない、なにげない生活が実はどんなに素晴らしいか。癌になると、治りたい一心で辛い治療を受けて癌と闘うための苦しい生活を始めます。でも、あまりに治療だけに固執してしまうと、残されたせっかくの素晴らしい日常生活を味わう余裕がなくなってしまう気がします。緩和ケアなども視野に入れた「快適な生活」が基本ではないでしょうか。


 

2012年12月号「かかりつけ医」

2012年12月24日

質問;高血圧は循環器科、慢性胃炎で消化器科と月にいくつかの専門医に通院しています

答え;ある病気の事に関して最良、最高の医療を提供してもらえる良いところがあります。しかし安定した後は定期的に診てもらう必要性は減ります。専門的な判断が必要な時に診てもらう事をお勧めします。

 

質問;最近、○○の症状がありますが、どこの科の先生に相談しても専門外だと言われてしまいました。

答え;自分の身体全体を把握して診てくれる、かかりつけ医にまず相談してください。薬の量、日常の体調、など総合的な判断より、必要に応じて最適な専門医を紹介いたします。

質問;かかりつけ医は、専門医でないので専門的なことがわからないかと不安です。

答え;しかし、いくつもの科から重複して薬が出ていることもよくあることです。やはり体の全てを把握している、かかりつけ医が必要でかかりつけ医がわかる範囲のことは、かかりつけ医で対処してもらいましょう。専門医への受診はかかりつけ医が判断するのが理想です。

質問;将来、通院出来なくなる時が来たらと心配です。

答え;元気なころから自分の身体をよく知っている、かかりつけ医に往診してもらうことが理想です。当院では、訪問診療、訪問看護が出来るので安心してください。長く最後までつきあえる、かかりつけ医がいると安心ですね。

当院では皆様のかかりつけ医、総合医をめざしております

 

院長のひとり言

元気なうちは皆さん自分の事は自分で決めていいのです。好きな専門病院を何個も掛け持ちしていいのです。しかし年齢とともに思考力、体力がなくなってきます。最後まで自分で決められる方は極めて少ないです。その時他人(体の事はかかりつけ医に任せる等)に任せられるか、これが重要です。自分で全部決めるということはかなりの覚悟がいります。

 

2012年11月号「血圧と自覚症状」

2012年11月24日

質問;血圧が上がると、なにか自覚症状がでますか?例えば「頭痛」「めまい」「肩こり」とか。

答え;基本的にはでません

 

質問;しかし「頭痛」「めまい」「肩こり」がひどいとき、血圧を測ると血圧がものすごく高くなっていて心配です。

答え;それは原因と結果が逆です。血圧が上がったから症状がでたのではなく、症状が出たため心配になりその結果血圧が上がるのです。

 

質問;自律神経ということですか?

答え;そうです。人は心配や不安になったり、喧嘩したり、怒ったり、これから土俵に上がるとき、ハンマ―を思い切り投げようとするとき自律神経を興奮させ(交感神経を興奮させ)その結果として血圧はあがります。血圧が上がるために怒ったり、不安になったりすることはないですよね。

 

質問;そういうときは血圧を下げる薬を使いますか?

答え;血圧のくすりよりも、まずは自分の気持ちの調節です。落ち着けば下がりますからご安心ください。

 

稀に血圧の上昇が脳の浮腫を引き起こし重度の頭痛を引き起こす高血圧緊急症という病態があります。めったにありません。

院長のひとり言

血圧手帳のグラフには血圧の正常値130/85?のところに太い線が引いてあります。患者さんの中には、この線をはみ出すことを異常に気にされる方がおります。この線をはみ出すと危ない、脳卒中になると。日頃活動的な方、心配性の方は上がりやすい傾向にあります。しかしお風呂に入ってゆったりした気持ちになったとき血圧が下がっていればまず安心です。そうそう脳卒中にはなりません。

 

2012年10月号「在宅医療」

2012年10月24日

質問;通院が大変になってきました。いろんな専門科にかかっていますが主治医がわかりません。

答え;いろんな科に通院している場合は主治医が誰だかわからないということがよく見られます。患者さん自身が主治医?のように振る舞う方もいますね。

 

質問;在宅医療をお願いするときには他院への通院は辞めないとだめですか?

答え;その必要はありません。在宅医療と通院を併用して結構です。その場合「主治医」は在宅医に任せた方がよいです。在宅医は患者さんの身体全部を診ます。また家庭環境、社会環境含めて診ていきます。そして将来どの科の通院が必要か、不必要かの判断をさせていただきます。

 

質問;いよいよ通院ができなりました。

答え;すべて在宅医療で診させていただきます。いろんな科から薬がでていると思いますが重複していたり、多すぎると思われる薬がでてきます。それは整理させていただきます。

 

質問;自宅で最期は迎えられますか

答え;自宅にいたいという気持ちがあればどなたでも迎える事が出来ます。当院が全力でお手伝いします。

院長のひとり言

いろんな専門家にかかっている方が通院困難となり在宅医療(訪問診療)を併用することになると、最初の仕事は内服薬の整理と通院科目の整理です。胃薬が何種類もでていたり、血圧の薬も何種類もでていたりするのです。静かな生活になると血圧は低くなり血圧薬はまず減量できます。通院先も一番重要なものだけにして他は当方で診て行きます。過度な薬や通院を減らすことによって体や精神的負担も減るようです。そしてよりよい自宅療養へと結びつけば幸いです。

 

2012年9月号「癌について」

2012年09月24日

質問;癌で亡くなる場合と老衰で亡くなる場合の違いはなんですか?

答え;・・・・明確な区別は難しいです。まず自然死にあたる老衰死について知るべきです。老衰の兆候は、元気がなくなります。食事量がだんだん減ってきます。最後は水を少々のみの日が続きます。周囲に無関心になります。寝る時間が増えてきます。「眠るよう」と形容されることが多いです。しかし最後の最期は呼吸が早くなり、荒くなります。これは苦しんでいるわけではありません。癌で亡くなる場合は、いかに上記の状況とかけ離れているかだと思います。

 

質問;うわごとを言ったり、わけのわからないことを叫んだりしています。

答え;冷静に自己分析できるか方に聞くと、最期になると、昔の事や思い出が走馬灯のように目の前にでてくるそうです。寝言に近いと思って見守ってください。

 

質問;癌の最期は苦しみますか?

答え;テレビの見すぎです。特殊な場合を省き、だいたいの方は苦しみません。痛みが出ている場合はモルヒネの鎮痛剤でほぼ調節できます。また極度の不安感など精神的なものから痛みが出ます。病気と闘うことも大事ですが、受け入れることも時には大切です。

 

質問;自宅で最期は迎えられますか

答え;自宅にいたいという気持ちがあればどなたでも迎える事が出来ます。当院が全力でお手伝いします。

 

院長のひとり言

だれでも病気になったら治りたいと思うのは当然の考えです。治ることに全力をかけてください。しかしある年齢に達した場合、病気があまりにも重い場合、治りたい気持ちだけで過ごすことがいい事なのか疑問に思うことがあります。人生劇場のエピローグ(終結部)を作れるのは本人のみです。ここが抜ける物語は寂しい。なんとか少しでも人生劇場の途中で、最期の物語を考える余裕、覚悟、があればいいな、といつも思っています。

 

2012年5月号「コレステロール」

2012年05月24日

質問;テレビでは「コレステロールは下げないと危険だ」と宣伝されていますが本当ですか?

答え;本当ではありません。コレステロールは脂質の一種で以下に示す例のように体にとって大切なものです。

1;皮膚などの元になっている細胞膜の原料

2;外敵から身を守るホルモンの原料

3;骨を作るビタミンDの原料

 

質問;体のコレステロールが少なくなるとどうなりますか?

答え;細胞膜が弱くなるので癌になりやすくなります。また体の抵抗力なくなるので風邪などにかかりやすくなります。

 

質問;多いとどうなりますか?

答え;コレステロール値が高いうえに、血圧が高い糖尿病がある、喫煙をする、身内に心臓病の人がいる、などの要素が加わると動脈硬化がすすみ易くなり、狭心症、心筋梗塞、場合によっては脳梗塞などになる可能性が少し高まります。コレステロール値だけが高い人はあまり心配しなくてもよさそうです。少し高いコレステロール値の人の方が長生きするというデータもあります。

 

質問; 総コレステロールが240以上での心筋梗塞の発症率は?

答え;男性で1.98~2.80人/1000人/年(発症率0.198%)

女性で0.34~0.45人/1000人/年(発症率0.034%)

(TIP1999vol14 No6より)

 

院長のひとり言

コレステロールが高くて薬を飲んでいる患者さんに心筋梗塞の死亡率はどのくらいと思うかと聞くことがあります。だいたい実際の値の100倍以上大きい答えが返ってきます。心筋梗塞の死亡率は交通事故の死亡率よりも低いのです。薬を飲むより道を歩かない方がいいかもしれません(笑)。われわれは病気になる心配をしすぎているのではないですか?もっと自分の体に自信を取り戻したいな、マスコミの宣伝に負けずに。

 

2012年4月号「アレルギー性鼻炎」

2012年04月24日

質問; アレルギーについて簡単に教えてください。

答え;ある物に対する過剰な体の反応のことを言います。鼻で過剰に反応すれば鼻水、皮膚で過剰に出れば蕁麻疹やかゆみ、目で過剰に反応すれば目の充血、かゆみ、涙、気管支に出れば喘息などになります。

原因の物質がいろいろあります。 その一つが花粉です。

 

質問 ;花粉症について教えてください。

答え ;アレルギー性鼻炎の一つで花粉が原因で反復するくしゃみ、水性鼻漏(鼻水)、鼻閉(鼻づまり)などの症状が出ます。

 

質問 ;花粉症の治療について教えてください。

答え ;まず基本は、症状がつらいとき鼻炎薬を飲む。次に、症状を出さないために症状が出ないうちから鼻炎薬をあらかじめ飲むという方法があります。西洋薬はおおむね花粉との反応を鈍らせる薬ですが、漢方は自分の体の弱い部分を補う薬です。

 

質問 ;薬で治りますか?

答え ;残念ながら薬は症状を止めるだけの効果しかありません。治したいとの希望であれば、脱感作療法が有名です。少しずつ花粉に触れ、体の反応が慣れてくるのを待つという方法です。

 

院長のひとり言

花粉症歴が約10年になります。人には「気合で治す」と放言したり、「免疫力を高めて治す」と言ったりしながら毎年苦労しています。花粉症の原因は花粉だけが悪いのではなく、人間の体が大きな意味で弱っているのではないかと考えているので、自分の体で実験しております。成果はいまだ現れず。です。

 

2012年3月号「アンチエイジング」

2012年03月24日

質問;アンチエイジング(抗加齢医学、老化予防)とは何ですか?

答え;「老化を予防し健康で長生きする」ことを目的とする医学です。加齢にともなう動脈硬化や、癌などの加齢関連疾患の発症率を下げ健康寿命をのばすことが目的をしています。

 

質問;老化とは病気の一つですか?

答え;老化は病気(老化しないことも可能)だと以前は言っていましたが、最近は老化の結果病気になりやすくなる という考え方です。

質問;老化しないために具体的にはどんな事をするのですか?

答え;栄養療法、運動療法、精神療法などが主で、特殊なものとしてサプリメント療法、免疫療法、美容医学などがあります。

 

質問;老化は防げますか?

答え;防げないのでなるべく遅くするために努力すること、実践が大切だとのことです。ただ大切なのは元気で長寿を享受することだそうです。あまり神経質にならず、人生をいかに楽しむかを考える事、いきいきと生活をすることがとても重要ということですか。(抗加齢医学会より)

 

質問;先生の考えを聞かせてください。

答え;老化の予防も大切ですが、残念なことに必ず老化します。一番重要なのは、老化したときの心の在り方、だと思います。恐れずにありのままの自分を受け止める心が自分を救うようです。

 

院長のひとり言

老化と健康とはオセロの黒駒と白駒みたいなもので、生まれたてはボードいっぱい白駒で埋められている。加齢とともに黒駒に埋め返され、最期は真っ黒。アンチエイジングとはいかに長く黒駒にやられないように戦っていくかという考え方です。勝ち負けと考えると必ず負け試合です。勝ち負けという考えではなく、変わっていく自分を美味く味わってみたいものですね。